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笹幸恵
2020.6.23 09:37日々の出来事

沖縄戦終結の日

今日は沖縄戦が終結した日。
正確には、沖縄戦を指揮した第32軍司令官である
牛島満中将が自決し、「組織的戦闘が終わった」とされる日だ。
この日以降も、8月14日まで戦闘が続けられていた。
(と、毎年書いているような気がする)。

少し前、『組織の不条理―日本軍の失敗に学ぶ』
菊澤研宗著(中公文庫)を読んだ。
経済学的に戦史にアプローチしていて、
これがじつに面白かった。
意外だったのは著者が沖縄戦について
「不条理を避け得た例」として評価していたこと。
実質的に作戦を立案した八原博通参謀は
徹底持久の方針を打ち出していた。
彼が著した『沖縄決戦』を読むと、
持久作戦しかなかったこと、にもかかわらず
周囲の突き上げによって5月に攻勢(総攻撃)を
かけることになり、忸怩たる思いであったことなどが
綴られている。

八原参謀の後世の評価は分かれている。
批判的なものは、
あの自伝は自分の作戦のまずさの言い訳でしかない、
どの面さげて生きて帰ってきたのか、などなど。
沖縄戦=民間人を巻き添えにした日本の悲惨な末路
というイメージから、生き残ってしまったことにすら
白い目が向けられる。

私自身も、菊澤氏の沖縄戦の評価に、最初は
ちょっとピンとこなかった。
あれだけ悲惨な結末だったのに評価するって???
だけど、勝ち負けは相手あってのこと、結果である。
私自身、どこかで勝ったから良い、負けたからダメと、
無意識のうちに結果論で過去を見ていたことに
気付かされた。

沖縄戦が始まる時点で取り得る作戦を考えた場合、
八原参謀はこれまでの日本軍の通例や空気に流されず、
「本土決戦を遅らせる」という作戦目的に沿って
持久作戦を立案した。
これはこれで、バンザイ突撃一辺倒(不条理)だった組織を
内側から変革することに成功したのだ。
実際は思うとおりにいかなくても、悲惨な結果に終わっても、
そのことをもって、彼の目指した方向がまずかった、
ということにはならない。

悲惨な沖縄戦を悲壮な顔で伝え、
「二度と戦争はあってはならない」と訴える
朝のニュース番組を見ながら、そんなことを考えた。
笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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